ネット小説書いてみるα


ネット小説パーテル・パーテル1




1 無数のトライブ

この国には、無数のトライブ(部族)があります。

というわけで、今日は渋谷のルキスのお話。

あ、ちょっとその前に、

みなさんは自分の国に参加しているというか、この国の国民なんだというか、そういった実感てありますか?

ここから書いていくのは、そんな実感というか、感覚器官すら持ち合わせていない、少し困ったさん達のお話です。

あ、国の定義は、まあ、また後で。



2 法律食いのミハエル

六法全書って、知っていますか?

知っているようで知らないですよね。

法律って、大昔は貴族のものだったんですよね。

みんなが使えないように、口伝で伝承されていたりして。

でも法律が文章化されて、広く大衆のものになって、そして複雑化されていったんですけど、

本当は法律って、私達の生活のしかただったり、ルールだったり、もっと身近なもののはず。

でも、まるでゲテモノを煮詰めた魔女の鍋のよう。

いったい何が飛び出す事やら。

それに、いったい誰のものなんでしょうね。

少なくとも、この人のモノではないわwwww


渋谷のダンボール村が出来たのは、5年前。

もともとダンボール暮らしの人が居たのですが、そう名前が付いてからです。

渋谷のアブレ者の若者の中に、その村が出来ました。

そんな渋谷のアブレ者の若者の中、ひときわ目立つアブレ者がいました。

名は藤堂ミハエルさん。

このアブレ者のミハエルが渋谷の街を闊歩する姿はアッカン。

足にはローラーブレード。

赤銅色のマッチョの巨躯に、風変わりな羊の毛皮を縛りつけ街を疾走。それだけで目立ちます。

そんなアブレ者のミハエルさんのいる、渋谷ダンボール村に目をつけたのは、東京都の道路課の課長、佐々木さんです。

佐々木さんが新しく同課に配属になった田代さん以下7名をつれて渋谷ダンボール村に現れたのは、木枯らしのふく季節です。

路上占有者の、立ち退きの新人研修も兼ねてとの事ですけれど。

道路課職員:佐々木さん、墨田のあだ浪橋の件は聞いていますか

課の部下の一人が、目を輝かせながら言うと、他の同僚も耳をそばだてるような素振りをしました。

課の最大の関心事なだけに、敏腕の誉れ高い佐々木さんの意見をみんな聞きたがります。

佐々木:ああ聞いている、担当は高橋くんだったな

佐々木さんは少しと得意げにいいました。

道路課職員:ええ、高橋さんには気の毒なことで

課の大概の意見はそんなものです。

佐々木:確かに気の毒ではあるが、初手を間違えた観はあるな

道路課職員:初手といいますと

佐々木:まあ、元々あだ浪橋は問題のある橋だった。交通量もそこそこ多く、橋の下には水道や都市ガスといったライフラインも通っている。下に路上生活者を置いていていい橋ではなかった

道路課職員:高橋さんもそれで努力はしていましたけれども

佐々木:努力のしかたがねぇ、路上生活者は人だ。人様に向かって、バカだの死ねだの言っていいものではない

佐々木さんがそう言うと、何人かがくすくす笑いました。佐々木さんほど人を小バカにした人間も珍しいからです。

佐々木:君?、笑い事じゃないよ。最近のマスコミのやり方。君達も覚えておいたほうがいい。路上生活者に金を渡し、盗聴器やカメラ、あまつさえ生活者自身に隠しマイクを仕掛けるケースもある。そして我々の暴言を引き出し、面白おかしく記事にする。

道路課職員:高橋さんもそれでやられたんですね

佐々木:ああ、高橋くんはベテランだよ。交渉も粘り強いものだったと聞いている。変えの居住さきまで用意していたほどだ。しかし挑発に乗ってしまった。裏でマスコミが画策していたとしても、弁明できるものではない。そして結果はあれだ。路上生活者への暴言をタネにマスコミの集中攻撃、マスコミの対応に追われている最中に、最悪の事態が起こった。あだ浪橋下の路上生活者の煮炊きの火が、ダンボール住居に引火。その火事が橋下のガス管に引火、爆発、水道ガス電気のライフラインはめちゃくちゃ。我々は9千万からの補修費用と焼死した路上生活者2人の責任を問われるはめになった

道路課職員:しかし、改めて聞いても不幸としか

佐々木:不幸?君達はあの事故を、不幸な出来事と言うのかね。私に言わせればあれは初手のミスだ

道路課職員:あれをミスと言うにはちょっっと

職員の一人が言いました。

佐々木:ミスではないか。では思い違いだ。君達は私達の強みはなんだと思う?では田代くんに聞こうか

田代:えっとう、その

田代さんは困った顔をしました。

佐々木:新人の田代くんに聞くのは、少々意地が悪すぎたかな。では、誰か

佐々木さんはそう言うと後ろを振り向いた。もう現場近くです。

道路課職員:組織力です。都の組織力です

課の一人が言いました。

佐々木:んん、そうだな。組織力だ。それは一面の真理ではある。しかし私達の行う作業は、都の仕事の中でも、とりわけデリケートな問題を扱う事を忘れてはならない

佐々木さんは咳払いを一つ、手にした彼のトレードマークである六法全書を胸の辺りへ振り上げた。

佐々木:君達も憶えておきたまえ。ペンは剣よりも強し。これはペンよりも強しだ

佐々木さんはそう言うと、六法全書を強く握り締めました。

佐々木:我々の頼りとするところは法だ。それ以外にない

佐々木さんは法の信奉者です。

資産家の家に生まれた佐々木さんは、わりと早いうちに法を志しました。

大学在学中に司法試験も取得。しかし佐々木さんは、検事にも弁護士にもならず、東京都の道路課を志望しました。

法こそ人類の至宝、最強の力。佐々木さんの信条です。検察権も司法権も頼らず、法と自らの法解釈のみで、路上生活者を立ち退かせる佐々木さん流の同課の仕事は、佐々木さんの誇りを満足させるものでした。

実際、六法全書を持ち、路上生活者の前に現れる佐々木さんの姿は、その自信もあいまって、人を威圧するような雰囲気すら醸し出します。

佐々木:さ、行こうか。今日は田代くんもいる事だし、難易度の低い仕事だ

佐々木さんの片手間に片付けようとしている仕事は、わずか20ばかりのダンボール住居の撤去作業。渋谷ダンボール村の撤去でした。

佐々木さんは渋谷ダンボール村に着くと、

佐々木:あ〜、君?

と、いつものように、演説まがいの説得に入ろうとしています。

住人:佐々木だ、佐々木が来た

と集まってきたのは、ダンボール村の住人。

その中に風変わりな巨漢、藤堂ミハエルさんもいます。

佐々・・・・・

佐々木さんは一瞬たじろぎましたが、手にした六法全書を握り締め、気を取り直すとまた口を開きだしました。

佐々木:君達はここに居ていいわけではない

佐々木さんがそういうと、やおらミハエルさんは手を伸ばし、六法全書をむんずと掴むと、

ミハエル:うまいのか

と、一言。バリバリと六法全書を食べてしまいました。

佐々木さん御一行は呆気に取られ退散。

その日から、アブレ者のミハエルさんは、法律食い。または、

 "法食いのミハエル"

そう呼ばれるようになりました。

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